遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

(引き継ぎ前夜)自由な存在。

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...学校にしばらく行っていないことがばれて、父さんに怒られた。

授業が嫌だったわけじゃなくて...カレンの顔を見るのが辛かったから。

 

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ボクはカレンのことが好きだったけど、カレンは母さんの妹で、ボクの「おばさん」にあたるから、たとえ同じ年でも結婚できないって、ロザンナが言ったんだ。

「イグナシオ、知らないの?カレンとイグナシオは近い親戚同士だから、結婚できないんだよ!」って。

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...だから、諦めなきゃいけないんだ。

我慢することにはある程度慣れてるけど、それには時間が欲しかった。

学校に行かない間、ずっとムーグの図書室で過ごしてた。

授業で習うのと同じ内容の本を探して読んでたから、勉強してなかったわけじゃないけど...そういうのは駄目らしい。本を読むだけじゃなくて、先生や他の子の話も聞くことも勉強の一部だって...

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「...他に学校に行きたくない理由でもあるのか?」

...カレンのことは言いたくなかった。

「...何でもないよ...ただ、行きたくなかっただけ」

「イグナシオ。お前は将来、父さんの後を継いでコロミナス家の兵隊長になるんだ。家族を守り、山岳兵団を守り、王国を守る重責を担うことになる。行きたくないから行かない、やりたくないからやらない、そんなことでは駄目だ。知識を学び、自分を律することを覚えなくては。それにお前はもうひとつ大事な役目があるだろう?」

「...」

「母さんから、「龍騎士の力」を引き継いで、来るべき魔物の脅威に備えるための戦士に-」

「...知らない」

「イグナシオ?」

「そんなのしらない!ボクはそんなこと、やりたくない!全部、ボクが決めたことじゃないじゃないか!もうたくさんだよ!」

「イグナシオ、どこへ行く!待ちなさい!」

...本当に、もう沢山だ。好きな相手だって選べない、やりたいことはできなくて、将来のことは勝手にあらかじめ決められてる。これから先大人になったって、なんにも希望なんか見出せないよ...!

ボクは父さんの腕を無理やり振り切って走った...。

 

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それからどれくらい時間がたったろうか。

時々、父さんや母さんの声が聞こえたけれど、森影に隠れてやり過ごした。

といっても、いつまでもそうしてはいられないのは分かっていた。

...戻らなきゃ...

それでもボクは、その前に気持ちを落ち着けたくて、もう一度、さっき父さんと話してた滝の前に戻った。規則正しい滝の水音を聞いていれば、頭の中が整理できる気がしたから...。

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「...イグナシオ、ここにいたのか」

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その声は父さんじゃなくて、ファーロッドお祖父ちゃんだった。

「父さんと母さんがえらく心配してるぞ...どうしたんだ?」

「おじいちゃん...」

「...ボク、兵隊長なんかになりたくないよ...。ほんとはおじいちゃんみたいに、遺跡を探険する仕事がしたかったよ...どうしてボクは...やりたいことが選べないの?アルベルトやヒルダは選べるのに...」

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ヒルデガルドは家族からは「ヒルダ」と呼ばれている脳内設定(^^;

「..イグナシオ、もしどうしても嫌だったら、アルベルトやヒルダに兵隊長を代わってもらうことも出来るんじゃないのか?」

「...二人に聞いたよ..でも二人とも、嫌だって。そんなこと、やりたくないって...。だから...ボクがやるしかないんだ...」

「そうか...。私は元々外国人だから、山岳のそういった因習は、正直くだらないと思っていてね...。そんなの無視して好きなことをやれ、本当はそう言ってやりたいんだ。」

「だが『他者から見たら不合理なものであっても、守らなければいけない誇りや伝統もある』お前と同じ名前の大伯父さんが言ってたよ。『それがあったからこそ一族は代々、険しい山岳地帯に留まって、長きに渡り王国の盾となってきた』ってね...。若い頃はこのことで口論もしたものだが、今はあいつの言うこともわからないでもない」

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「...おじいちゃん...」

「ただお前に...意思に反することを我慢してやれ、そう諭すつもりもないんだ。お前には幸いにも、自由になれる道がある」

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その時、おじいちゃんの瞳の奥が、キラリと緑色に光った気がした。

闘技場で見た..あの大きな守り龍の鱗のような色だ...

「...龍騎士になれ、イグナシオ」

龍騎士になればお前は、所属組織に関わらず全てのダンジョンに行ける。洞窟も、遺跡も、森も、全ての探索権がお前に与えられる。

それだけじゃない、通常は国王以外は入れない、守り龍の棲む森にすら、足を踏み入れることができる。しかもお前の組織内での地位に関わらず、永久の権利としてだ。

組織のしがらみなど超えて、自由な存在になれるんだ。」

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「自由な...存在?でもおじいちゃん...ボクは龍騎士になれるほど、強くないよ...ボクの「チカラ」の成長はもう止まっちゃったんだ...これからも伸びないことはないけど、すごく時間がかかるって...父さんやゴドウィンお祖父ちゃんみたいな才能は、ボクにはないんだよ...」

「素質は父さんじゃなく、母さんのほうに似てしまったんだな...。母さんは旅人の...私の血が入ってるから、残念ながら限界値が低くなる...。

だがイグナシオ、案ずることはない...。お前にはそのための力がちゃんと用意されている。私がマグノリアに託した、龍騎士の力だ。もうすぐお前はそれを、母さんから引き継ぐことになるだろう。その力を使え。お前が自由になるために」

「おじいちゃん...」

「さあ、父さんと母さんが心配してるぞ。そろそろ戻ろう」

「うん...」

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...それから9年後、「俺」は龍騎士になった。

果たして祖父の言っていた「自由な存在」になれたんだろうか...?

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自由には責任が伴う。

責任を果たすために、捨て去らなければいけなかったものもある。

それでも...

「自由になれる」祖父のその言葉が、

それまで義務感に縛られていた未来を、違うものに変えてくれたことは確かだと思う。

龍騎士になったもの、龍騎士の力を受け継いだ者は目が緑に光る!という脳内設定です..ああ我ながらキモイ...

(あとがき的なもの(^^;)

エルネアをプレイしていると、小説の「行間」ではないですが、ついついイベントの間に存在するであろう「会話」や「情景」を勝手に妄想してしまいます。

今回のコレも脳内にまずイグが「龍騎士になれ」と祖父に言われる...という情景が浮かんできて、そこからその情景を補完するために「親父に怒られる」妄想が産まれました。しかし妄想と妄想を上手く繋ぎ、内容に整合性を持たせるのはこんなに難しいとは...ちゃんとした文章が書ける方、漫画や絵にできる方、ほんとうに羨ましいです。

 (余談:口調について)

 イグナシオの性格は当時「しなやかな魅力」だったので、本来は父母のことは「パパ」「ママ」と呼んでいるのですが、ちょっと内容にそぐわなかったので「父さん」「母さん」に変えました。同様に祖父ファーロッドは「まじめ」なのでゲーム内一人称は「僕」。しかし孫に「僕」というジイサマはおらんじゃろ...ということでこちらも変更。爺さんになったファロが「僕」を使ってるのは妻のアルシアちゃんにだけです...多分...