マグノリアからイグナシオへ。
イグナシオ...あと数日たったら大人になるんだね。
コロミナス家にお嫁に来てあなたが生まれて...本当にあっという間だったよ。
もうすぐ大人になるあなたに、渡さなければいけないものがある。
わたしがお父さんから預かった、「龍騎士の力」。
...前にも話したことがあったよね。
私は、お父さん...、あなたのお祖父ちゃんから「龍騎士の力」を引き継いだの。
いつ何時開かれるかもしれないアベンの門。
たとえその時が来たとしても...魔人を迎え撃つ戦士を絶やさないために、
お父さんは古代の魔法を使って、自分の力を子供である私に引き渡した。
「マグノリアちゃん、大人になったら強い戦士になるんだよ。そして、子供が出来たら...その力をその子に引き継いであげて。そうやって力を代々受け継いで...私たちは遠い未来まで行くんだ。」
わたしは子供だったから、お父さんの言うことがよくわかっていなかったの。
それが何を意味するかを...。「力を受け継ぐ」とはどういうことかを。
わたしが力を得たのと引き換えに、実はお父さんは全ての力を失っていた。
そのことをわたしが知った時には、お父さんはボロボロの状態でバグウェルと戦っていた...。
わたしがいつの間にか手にしていた緑色の銃は、実はお父さんの「龍騎士の銃」だったことに、初めて気がついたの。
その時初めて、自分が託されたものの重さを知ることになった...。
お父さんは、わたしが将来、龍騎士になることを望んでいた。
わたしも勿論、そのつもりだったの。
お父さんみたいな強い戦士になること、それが子供の頃の夢だったわ。
お父さんがわたしのために、一旦力と武器の全てを失ったこと。
そのことを知った時、更にその気持ちが強まった。
でもわたしは...
ジャスタス君...あなたのパパを、好きになってしまった..。
山岳家の跡取りであるジャスタス君と結婚することは、自分の夢を諦める事。
それと同時に、お父さんの願いを裏切ることだとわかっていた。
それでも私は、ジャスタス君と共にあることを選んだ。
そしてそのことを、今も後悔していないの。
そしてあなたが生まれた。
あなたが生まれた日の夜、今も昨日のことのように覚えているよ。
あなたが来てくれて、本当に嬉しかった。
イグナシオ...あなたは本当に、いつも気遣ってくれる優しい子だったね。
それに頑張り屋だった...子供には難しいダンジョンでも、怖かっただろうに一生懸命ついてきてたね。
そんなあなただからこそ
この力を託したいと思った。
お父さんから預かったこの力。
どうか...これからあなたが生きていく中で
あなたを守り、支える力となりますように。
大丈夫、あなたは強い子。
きっとこの力を上手く扱えるわ。
父さんも母さんも、
生きてる限りずっとずっと、あなたのことを見守っていくから...。
「イグナシオ、今からこの力は、あなたのものよ」
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お父さん。
あなたから預かった龍騎士の力、無事イグナシオに引き継ぎました。
わたしが見つけた斧のスキルも、二つくらい増やしておいたよ。
ビーストセイバーもおまけにつけてね。
わたしは勇者になれなかったけれど
未来の子孫のために....少しくらいは役に...立てたかな?