遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

性格を変える薬(1)

...父と母、祖父から預かった荷物はとても重い。

私には、将来果たすべき二つの「仕事」がある。

一つは、父から家督を継いでコロミナス家の兵隊長となり、

家族・兵団・王国を守る盾となること。

もう一つは、龍との戦いを制し、「龍騎士の斧とスキル」を手に入れること。

 

既に「龍騎士の銃とスキル」は祖父が得て、母を通して私に受け継がれている。

次に私が龍騎士の斧とスキルを手に入れることができたなら、

私は銃と斧、二種類の「龍騎士の力」を持った戦士となる。

後は子供にその力を引き継ぎ、その子が更に「剣の力」を手に入れれば、

そこで遂に「3種の力を備えた最強の戦士」が誕生する。

 

f:id:OBriens185:20201016220754p:plain

...あくまでも理論上の話だけれど。

 

そこまで至ることを考えると、

今の私には、想像するだけでも遠い道のりにしか思えなかった。

力は既に受け継いだ。

だけど、力だけで強い戦士になれるわけじゃない。

父は、戦士に必要なのは「心・技・体」の3つの要素だという。

その要素のうちどれが欠けても、強い戦士にはなれないと...。

...そして、私はどうも、その「心」が欠けてるように思うんだ。

 

友人と練習試合をする時でさえ、相手に技を打ち込むのを躊躇してしまう。

相手の痛みをつい想像してしまって...。

父や祖父の試合を見ても、自分も同じ場所に立ちたいなんて、到底思えなかった。

いつもいつも、相手の事情を無駄に慮ってしまうんだ。

それぞれが想いを背負ってあの場所に立っている。

戦って勝つことは、相手のその思いを断ち切ること。

それが自分に出来るんだろうか。

 

相手の痛みを想像してしまうのは、本当は自分が痛みを背負いたくないからだ。

戦士としての覚悟は、痛みを受ける覚悟でもあるのに。

そして、大きな目的を果たすためには、時には非情にならなくてはいけない。

非情を貫くにも覚悟がいる...。

龍騎士になれば自由になれる」

祖父はそう言ったけれど、

そこに辿りつくまでに、果たすべき責任はあまりにも大きくて。

 

解ってはいるのにどうしても、「あるべき」自分になれない。

 

f:id:OBriens185:20201016220901p:plain

摂取すれば潜在能力を大いに高める効果がある、砂漠の民の秘薬、ラムサラ。

これには実は、人格に与える大きな副作用があるらしい。

性格の3要素のうち「優しさ」を大きく下げる恐れがあると...。

手っ取り早く能力を高められるということで、服用を検討する者も多いが、

その副作用があることを躊躇して、殆どの人間は結局手を出さない。

...私にとってはむしろ、その副作用の方が魅力的だったので、迷わず飲んでみることにした。

...でも何も変わらなかった。

能力は伸びたけど、今欲しかったのはそれじゃない。

伸びた力とは不相応に、

相変わらず弱いままの、覚悟ができない自分がいた。

***************************************************************************************

...ちょっと値が張るけど、「確実に」性格が変わる秘薬があるんだぜ?試してみるかい?

キャラバン商会のカルロスからその薬の話を聞いた時、私は躊躇しなかった。

...いいね。そういう薬を、探していたんだ..

...本当にいいのか?別にお前さん、何も直すところなんて、ないじゃないか。いつも礼儀正しくて親切で、友達も多くてみんなに好かれてる。そのままでもいいんじゃないか?

...これからの私に必要なのは、礼儀正しさとか親切とか、そういうことじゃないんだ...。だから構わないよ。もしそれで友達が離れていったって...。

...わかった。じゃあこれがその薬だ。飲み方は簡単だ。なりたい自分を想像して、口に含むだけでいい。まあ、確かにお前さん、何があったかわからないが、なんだか結構苦しそうだな。個人的に推奨するわけじゃないが...いい結果になることを祈ってるよ

 ...ありがとう。

f:id:OBriens185:20201016220937p:plain

カルロスから受け取ったちっぽけな赤い薬。

一見子供向けの飴玉のようにも見える。

こんなもので本当に性格が変わるのか?と思うけど、

本当に効き目のあるものは、案外仰々しい見た目ではないのかもしれない。

私は目を閉じて、薬を口に含んだ。

 

なりたい自分か...。

目的を果たすために、何が必要かをしっかり見定めて、

情に流されない、強い心を持った戦士。

そうだね、それに、物怖じしない積極性もあるといいかな...。

 

...やあ。「俺」を呼んだかい?

 

f:id:OBriens185:20201016211256p:plain

目の前に立った青年は私に瓜二つだったけど、鏡を見ているというよりは、

「双子の兄弟」のように思えた。

...こんにちは。これから「私」の代わりに、果たすべき「仕事」を終わらせてほしいんだ。君は私より強いから、きっと大丈夫だよね。

私は君の中で、眠らせてもらうことにするよ...

 ...わかった。任せとけ。今まで苦しかったろう?

もう大丈夫だよ。お前の「覚悟」は「俺」が代わりに受け止める。

俺が代わりに使命を果たしてやる。だから、安心して眠っていい...。

...ありがとう。じゃあ、宜しくね...。

...またな。また、いつか会おう。

***************************************************************************************

俺は目を開けて、「これからやるべき仕事」を改めて考えた。

父から兵隊長を受け継ぐために。

そして、龍騎士となるために。

そこに至るまでの時間を、無駄にしてはいけない。

探索の時間を増やさなきゃな。

 

f:id:OBriens185:20201016213000p:plain

...だけどその前に、オリンピア

君の好きだったイグナシオはもういないことを

君にまず伝えないと...。