遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

性格を変える薬(2)

「お父さん、イグナシオが最近変なのよ。なんだか口調から別人になっちゃって...。

全く違う子が家にいるみたいなの。おっとりした子だったのに、急にシャキシャキしだして...。どうやらキャラバン商会で変な薬取り寄せて飲んだらしいのよ。

薬で性格を変えるなんて、何か悪影響がないか心配だわ。

お父さんは仕事柄、薬にも詳しいでしょう?良かったら調べてもらえないかな。」

「...ハートドロップか。性格を変える薬だね。...分かった。過去の使用例について文献を調べてみるよ」

「助かるわ。お願いします...ごめんね...エルネア杯の最中で忙しいのに」

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「いや、「この世の真理の探究」は私たち魔銃師の本懐だから構わないよ。

それに、白夜の年だから探索ポイントを稼ぐ必要もない。むしろ普段より時間があるからね...」

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「...待たせたねマグノリア

「ありがとうお父さん!...で、どうだった?」

「結論から言えば...まあ、心配ないよ。イグナシオが変わったと言ったが...

たとえば、お前たちに暴力を振るったり、理由なく他人を傷つける言葉を吐いたりしたか?」

「いいえ、そんなことは全然。今まではお友達との練習試合で、相手に変に気を使って負けちゃったりしてたのが、今は結構容赦なく叩きのめしてるらしいけど...、まあ、武術職同士なら仕方ないよね。そうしないとお互い強くなれないから。

ああ、そうえいばこの間グラハムと練習試合やって、勝っちゃったらしいの!

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※グラハムはマグノリアの弟、イグナシオの叔父で近衛騎兵

それでね、「グラハム、ちゃんと探索しないから俺に負けちゃうんだよ。このままだと白夜明け、残留やばいんじゃない?」なんて言ったらしくて...。

姉貴!あいつの態度一体何だよ!急に俺のこと呼び捨てにするし、言動もクソ生意気になりやがって...」ってグラハムがブーブー言ってきたの。

父さん、これって「理由もなく他人を傷つける」に入るかしら...ね?」

「...まあ、以前のイグナシオなら、気を使ってやんわりした言い方にしそうだが...グラハムはもって回った言い方じゃ絶対気づかないからな。アイツにはいい薬だよ。

...と、話を戻そう。イグナシオは弟妹にすごく優しくしてたけど、その辺はどう?」

「前みたいに絵本を読んだり、ハーブ摘みに連れてったりはあまりしなくなったけど...よく森の小道に連れてってるみたい。アルベルトは「えー!」ってちょっと嫌がってたけど、ヒルダは喜んでるわ。こっちの方が楽しい!ってね※」

「アルベルトは怖がりで、自分からは絶対行かないからな。成人までに少しずつ慣らすにはいいことだよ。...ほら、こうして検証してみると、イグナシオが変わったといっても、別に極端に凶暴になったり、冷酷に変わったわけじゃないだろう?本質的な部分は変わってなんかいない」

「そう言えば、そうね...。」

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「人の人格と言うものは単純ではなくて、表面に出ている部分がその人の全てじゃないんだ。心の奥底にたくさんの人格が眠っているものなんだよ。

そしてあの薬...ハートドロップは、強烈な自己暗示作用を持っていて、自分の望んだ人格を、深層意識から引っ張りあげる力があるらしい。

本当の意味で、人の心を根本から変えてしまうようなものじゃない。

だから、今のイグナシオも、決して「別人」なんかじゃないはずだ。

安心していい、マグノリア

「そうなの...あまりにも口調から何から違うから...慣れるのに時間がかかりそうだわ。

ジャスタス君は、「違和感はあるが...いずれ兵隊長を任せるんだから、悪霊にとりつかれたとかそういうことで無ければ、正直今の方がむしろ安心だ」なんて言ってるけどね...」

「表に出て居る人格とそうでないものは、完全に切り離されてるわけじゃない。薬で無理やり沈められた人格も、時間が経つうちに..少しずつ浮上してきて、そのうち自然に同化するはずだよ。だから今まで通り接してあげなさい」

「分かったわ、ただ...」

マグノリア?」

「結果はどうあれ...あの子が薬で性格を変えようとまで思い詰めてたなんて...。

私、母親なのに気づいてあげれなかったわ...。そんなことする必要なんて、ないのに...。

イグナシオは十分強い子なのに。私はあの子に、とんでもない重荷を与えてしまったのかもしれない...。本来私が背負うはずだったものを、あの子に...」

マグノリア、責めを負うべきはお前じゃなくて私だよ。全て私が始めたことだ。

そしてイグナシオは、使命を果たす覚悟を決めるために、あえて薬を使ったんだろう。

今はその覚悟を受け止めてやることだ。私たちが今できるのは、それだけだよ」

「お父さん...私にも、責任があることだわ。あの子に力を渡したのは私だから...。

だからこそ、気づいてあげれなかったことが...悔やまれるの。

でも今は、今のイグナシオを受け入れること、それがあの子に報いることでも...あるのね...」

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イグナシオ...。

私が身勝手に始めたことで、お前の心まで犠牲にしてしまった...。

それでも私たちは 遠い未来まで

この力を受け継いでいかなくてはいけないんだ...

 

-最後までお読みいただきありがとうございます。

ハートドロップの話、あともう一回だけ続きます-

 

 

※イグナシオの妹ヒルダはこの時まだ2歳。ゲーム通りの設定だと森の小道にはまだいけないのですが...設定無視しちゃいました(^^;