遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

もう一つの準決勝(2)

「兄さん、勝利おめでとう」

「ガイスカ、次はお前の番だな。一足先に決勝で、待ってるからな!」

15日の準決勝。兄は義弟にあたる山岳兵団長にあっさり勝利した。

祝福の言葉を告げた自分に、兄は上機嫌で話を続けた。

 

f:id:OBriens185:20201024182821p:plain

「知っての通り、俺たち近衛騎士隊ではここしばらくの間、龍騎士はおろか、勇者さえ輩出していない...。王立闘技場は俺たちのホームグラウンドであり、初代龍騎ローゼルは、近衛騎士だったにも関わらず、だ。

優秀な先輩たちをもってしても、魔銃師会の勢いを破ることはできなかった。

だが、目の上の瘤だった魔銃師会は、既に全員敗退した。

これでお前が準決勝に勝利すれば、決勝戦は俺とお前、騎士同士の対戦となる。

どちらが勝っても騎士隊の勇名を、世に轟かすことができるんだ。

俺たちに課せられた使命は重いぞ。まあ魔銃導師にすら勝てたお前のことだから..

勿論大丈夫だと思ってるけど、な!」

兄はばん!と私の肩を叩いた。

「兄さん、解ってるよ、決勝で待ってて。期待通りの戦果を上げてくるから」

「それでこそお前だよ。といっても、決勝ではいつも通り容赦しないからな!」

「お手柔らかに...とは言えないね。私も遠慮なく当たらせてもらうから」

 

f:id:OBriens185:20201024171916p:plain

...そうだね、兄さん。

それが自分たちに課せられた使命なら、私はそれを全力をもって果たすのみだ。

ただ...悪いけれど

私が決勝で戦いたかった相手は、本当は兄さんじゃなかったんだ...。

 

13日の魔銃導師との対戦では、誰も私が勝つとは思っていなかっただろう。

それだけ武器・能力...全てにおいて相手が勝っていた。

ただ、私は何が何でも勝ちたかった。勝って決勝に進みたかった。

そのために、それまでの試合で魔銃師達の動きをつぶさに観察し、徹底的に分析した※

結果は...辛勝ではあるが、私の勝利だった。

f:id:OBriens185:20201024150801p:plain

そこまでしたのは...決勝でしか戦えない相手がいたからだった。

あの組織には年齢制限がある。相手がこの場に立つのはこれで最後だろう。

龍騎士になれる最後のチャンスを相手が逃すはずはない。

騎士隊員としても、オブライエン家の人間としても、自分の立場を裏切ることではあるけれど..

実はあの時私は、兄の勝利を願ってはいなかった。

...が、自分の予想と密かな願望はあっさりと覆された。

私の、立場を除外した、極めて個人的なエルネア杯への動機は、ここで終わることになった。

 

気乗りのしない準決勝の相手は山岳兵団のカティーナ・ペトレンコ。

ナトル時代は同級生だった。

といっても話をしたことは殆どない。いつも生真面目にノートを取ってる姿だけはなんとなく覚えている。

彼女の印象はその程度で、お互いが武を競う立場となった今も、そこから大して変わったわけではない。

娘ロシェルが、図らずも彼女の息子と婚約することになったが...

正直言うと気乗りのしない縁組だ。

だが子供の頃から育まれた愛情を、否定するわけにもいかなかった。私と妻もそのようにして結ばれたからだ。

幼い頃からの慕情というものは...消し去ろうとして簡単にできるものではない。

それは私自身がよくわかっている。

「..アンテルム君がすでに武術職で嬉しいよ。上級ダンジョンでも一緒に探索ができるからね。今度ぜひ一緒に、ゲーナの森へ行こう。それとも帰らずの洞窟の方がいいかな」

f:id:OBriens185:20201024171312p:plain

「...は、ハイッ...」

婚約パーティの際、私がこう話しかけると、彼は明らかに狼狽していた。その様子から、彼が8歳にもなるのに碌に探索に行っていない事実が見てとれた。

それでも、こんな頼りない男でも、いずれ兵隊長の地位につき、更にはエルネア杯の出場権も得るのだろう。なんといっても6人中4人が出場できる緩い条件だ...。しかも6人に入るには試験などなく、年配になると強者は順番に引退していってくれる。一方で娘ロシェルは、これからどんなに鍛錬しようと試合に出ることも叶わない。

姉さんも、ロシェルも-。

どうして大事な者たちは、望んでこんな古臭くて、馬鹿げた因習に縛られた組織の一員になってしまうのか...

 

個人的な意欲は落ちたしても、ここで山岳兵団に花を持たせるわけにもいかなかった。

兄が語る通り、「騎士隊の強さを王国に示す」ことも、騎士隊副隊長としての私の任務だから。

既に義兄は兵団長の地位を降りたと聞く。

兵団代表の任を譲られた彼女は、必死にこちらに向かってくるだろう。

どんな相手でも、ガムシャラに向かってこられるほど厄介なことはない。

悪いがこちらも、全力で君を倒させてもらうよー。

私が戦いたかった山岳兵は、君ではなかったんだけど、ね...

**********************************************************************************

17日 エルネア杯準決勝(第二プール)

山岳兵団 兵団長代理 カティーナ・ペトレンコVS

近衛騎士隊 副隊長 ガイスカ・オブライエン

 

f:id:OBriens185:20201024174225j:plain
f:id:OBriens185:20201024174234j:plain

 

f:id:OBriens185:20201024174245j:plain

勝者:ガイスカ・オブライエン

 

「ガイスカ!やったな!これで決勝は、俺とお前の一騎打ちだ。

騎士隊長の座同様、龍騎士の座も渡すつもりはないからな。覚悟しておけよ」

「ありがとう。兄さんも覚悟しておいて」

「...何かお前、勝った割には、あんまり嬉しそうじゃないな...戦ってる時も、なんだか苛ついてるようだったけど...気のせいか?」

「いや...そんなことはないよ。初めてのエルネア杯だから...柄にもなく緊張しているだけさ...」

(準決勝編・おわり)

※エルネア杯編はもうちょっと続きます(^^;

※最初の文章ではエゴンさんの動きだったんですけど、考えたらエゴンさん魔銃導師だったからシード取ってたので、VSガイスカがエルネア杯初戦なのでした。この「魔銃師対策」のノウハウはガイスカから他の騎士隊員にも後に伝授され、騎士VS魔銃で騎士が勝つ確率が上がります←うちの国ではまじに騎士強い(^^;