遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

選ばれなかった子(1)

「カール...言い訳がましくなるが、力の継承者にお前を選ばなかったのは、お前の能力が劣っていたからじゃない。お前の成人前にはまだ私の能力が...後世に引き継ぐまでのレベルに至ってなかったからだ」

「いいよ、父さん。俺は全然気にしてないよ、龍騎士でも何でも自分の力で掴み取るまでさ!」

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...父から「龍騎士の力の継承者」にマグノリアを選んだ話を聞いた時、

強がってそう答えはしたけれど、一抹の寂しさを感じたのは事実だ。

 

そもそもなぜ「継承者」にマグノリアを選んだかというと、

「あの子が唯一、子供の頃の夢を「龍騎士」と言ってくれたから」だそうだ。

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俺の夢は「バグウェル」で、確かガイスカは「フォモス」だったか...。

ちなみに、その下のマティアスやグラハムは、父の寿命のことも考えて、候補から外したらしい。

「バグウェル」も「龍騎士」も要するに、子供の発想で「強い存在」ということを表現を変えて言ったに過ぎない。

だから「夢が龍騎士だったから」というのは、実はこじつけだったと思っている。

当時マグノリアは「オブライエン家に生まれた唯一の女の子」だった。

単純に父は、妹のことが可愛くて仕方がなかった...それが本当の理由だろう。

能力で言えば、ガイスカが兄弟の中でも、群を抜いて優秀だったから。

 

俺とマグノリアは成績もドッコイドッコイで、

取り立てて優れていたわけではなかったが、

逆に目を背けたくなるほど酷い成績でもなかった。

妹が俺より優れていたわけじゃない。

が、俺も妹に勝っていたわけじゃない。

俺も妹のことは可愛く思っていたし...マグノリアが選ばれたからといって、

妹を妬ましいと思ったとか、不満だったとか、そういう気持ちはなかった。

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ただ、俺は「選ばれなかった」

そのことがずっと...心の隅っこに..どうしても取り切れない塵のように、残っていたんだ。

 

マグノリアを後継者に」という父の目論見は、あっさりと崩れることとなった。

マグノリアが、山岳コロミナス家長子のジャスタスと恋仲になり、山岳嫁として嫁ぐ道を選んだからだ。

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ジャスタスは俺にとっても幼い頃からの友人で..

その誠実で実直な人柄を知っていたから、俺は心から二人の結婚を祝福した。

あいつなら安心して、大事な妹を任せられると思った。

だが父にとっては二人の結婚は「計画をぶち壊す暴挙」でしかなかった。

よって当然、激怒して大反対したが...

結局俺や親友のイグナシオさんの仲裁もあり、しぶしぶ折れて受け入れることとなった。

マグノリアはもはや龍騎士にはなれないが、マグノリアの力を引き継いだ孫が、

山岳兵隊長として龍騎士になれば、銃と斧、二つのスキルを持った戦士が誕生する。」

父はそう考え直して自身を納得させたらしいが、それでも...

期待をかけた愛娘のある種の裏切りには、かなり落胆したようだ。

「これでは、ガイスカを選んだ方が、良かったかな...」

あるとき父が母にこう話しているのを、偶然聞いてしまった。

-ここでも俺はお呼びじゃないっていうことか-。

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でもまあ、父さんがそう思っても仕方がないんだ。

成人後の俺は明らかに「デキの悪い」息子だったから...。

 

俺は成人後一年経ったらすぐに「近衛騎兵選抜トーナメント」にエントリーした。

騎士隊入りを選んだ理由は単純に「格好良かった」からだった。

歴代の騎士隊長が授業で語ってくれたように、近衛騎士こそが「王国の花形」であり、眩しい存在に思えた。

父が長く魔銃導師を務めていた為、

子供時代の殆どの期間を導師居室で過ごしたけれど、

なぜか魔銃師会には憧れを持てなかった。

自分自身も魔銃兵は向いていないと思っていた。

父もそれには同意見だったようで、父から魔銃師会入りを勧められたことはない。

ガイスカの方には、熱心に勧めていたようだけど...。

 

意気揚々とエントリーしたはいいものの、実力不足は明らかで、

俺はアッサリと二回戦で敗退した。

根拠のない自信だけはあったので、めげずに翌年も志願した。

だが、結果は同じだった...。

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-結局、やみくもに志願しても、それに伴うだけの実力がなければ、ただ徒に枠を消費するだけなんだ...。

根拠のない自信だけで突き進んだ自分が恥ずかしかった。

翌年はエントリーを諦めた。

 

ちょうどその頃、俺は今のカミさん...当時は恋人だったアラベルと結婚した。

本当は、二回目の挑戦で優勝できたら、即座にプロポーズするつもりだった。

...が、そんな物語のような、よく出来た展開にはなるはずもなく...

結果、グズグズとプロポーズできずにいる俺に放置されている親友を心配した妹から、キツイ一言を見舞われた。

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「お兄ちゃん、アラベルちゃんはお兄ちゃんが恰好良くて強いから、好きになってくれたんじゃないと思うよ。だから、騎士になるまでなんて...引きのばす必要、ないんだよ!」

「...そ、それハッキリ言うなよ!」

「だから、そのままでいいじゃない。お母さんだって...強いからお父さんを選んだと思う?」

「いや...むしろ母さんはよくボヤイてたよな。『わたくしは「英雄の妻」になりたかったんじゃないのに...。出会った頃のように、もっと一緒に時間を過ごしたいのに』ってさ」

「アラベルちゃんは、お兄ちゃんと一緒にいて楽しい、いつもおどけながらも気を使ってくれる優しさが好きって言ってたよ。変に恰好つけないで、そのままの自分で、いいんだよ!」

「...そっか」

...こんなデキの悪い俺でも、好きになってくれる相手がいるなら...

俺はその娘のために生きよう...

こうして俺は、騎士への夢を一旦脇に置いて、アラベルとの新しい生活に軸足を移すことにしたー。

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(つづく)