遠くから来て遠くまで。

エルネア王国プレイ中に生じた個人的妄想のしまい場所。

選ばれなかった子(2)

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かくして俺は一家の主となり、可愛い嫁さんアラベルとの新婚生活に入った。

日々は穏やかに過ぎていった。

騎士への夢を諦めたわけじゃないけど...

こうやって、家族とのんびり生きていくのも、ありかもな。

そんなことを思うようにもなった。

分不相応な望みを抱いて、うまくいかずにヤキモキして過ごすよりも

今のままのほうが、きっと楽だから...。

 

そうやって、自分の気持ちに蓋をしてやり過ごそうとしていたある日、

アラベルが「報告があるんだけど...」と声をかけてきた。

にこにこ微笑んでるアラベルの頬はバラ色に上気して、

エナ様がそのまま地上に降りてきたかのように綺麗だった。

すごく幸せそうだ。これは...

「ニヤニヤしてどうしたの?」

俺は照れ隠しに思わず「ニヤニヤ」なんて変な表現を使ってしまった。

「カール、あのね...」

可愛い嫁さんは一度恥ずかしそうに下を向いてから、もう一度にっこり微笑んで、言葉を続けた。

「赤ちゃんができたの」

...まじか!

「そっか、やったな!...万歳!」

俺は嬉しくて仕方がなくて、アラベルの手をとって何週もグルグルと回ってしまった。

「...ということは、俺、父親になるんだな」

「そうだよ、カールはお父さんになるんだよ」アラベルはくすくすと笑いながら言った。

...俺は父親になる。

今のままで、いいのか?

果たして俺は、子供に胸を張れるような、父親なのか?

 

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「カール、将来は何になりたい?」

子供の頃、両親によく聞かれたっけ。

いつか、俺自身も子供に尋ねることになるだろう。

尋ねるのは、子供に夢を持ってほしいからだ。

夢を持つことで目標ができる。

実際に叶うかどうかは別にして、目標に向かって頑張ることを学んでほしいから。

...今の俺はどうだ?

こんな中途半端な形で夢を終わらせて、どうして子供に夢を尋ねられる?

 

...数日後...

俺は決心して、アラベルに話を切りだした。

「俺、もう一度...騎士選抜に出ようと思うんだ」

「その言葉を待ってたよ」

「...え?」

「カールが簡単に諦めるわけないと思ってた。

そんな簡単に諦めるような人だったら多分、好きになってなかったし...。

でも、あたしから強制するようなことじゃないから。

頑張りなよ、お腹にいるこの子にも、かっこいいお父さん、見せてあげて。」

「アラベル...ありがとう!ほんとに、ありがとう!」

俺は思わずアラベルをぎゅっと抱きしめた後で、彼女が妊娠中だということを思いだして、パッと手を離した。

「悪い!おなか...大丈夫?」

「これくらい大丈夫。赤ちゃんにもパパの心音聞かせてあげなきゃね」

...アラベル..。ほんとに...俺には勿体ないくらい、できた嫁さんだ...。

俺は、彼女との縁を繋いでくれた、妹にもあらためて感謝した。

 

 

やがて年が明けー

俺は、近衛騎士選抜トーナメントにエントリーした。

 

初試合の二日前の11日、待望の第一子が生まれた。

息子だった。

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表記は当時のPCマグノリア視点なので「甥」になってます...(^^;

名前は「ランス」と名付けた。

敵を真正面から貫く、異国の武器を意味する名だ。

その名のごとく、真っ直ぐで強い男になってほしい、そう願いを込めたんだ...。

生まれてきてくれたランスの為にも、俺は勝ちたい。

こいつが歩き出す頃には、騎士の鎧をまとった親父の姿を見せたい。

 

そして13日。

息子が産まれた余韻に浸る間もなく、俺にとっての三度目の挑戦が始まった。

 

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前年かなり探索に力を入れてきたから、今回はそれなりの余裕をもって戦えた。

また、三度目の挑戦ということで、

実戦の雰囲気にも、かなり慣れている自分に気がついた。

どんなに修練を積んでいても、やはり探索での戦いと対人戦は違う。

 

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二度の挑戦は無駄に終わったように思ってたけれど、

「経験」という大きな宝が残っていた。

自分の心に、ほのかな自信が宿っていく。

 

晴れて近衛騎兵になれるのは、選抜志願者16名のうち、たったの2名。

決勝に辿りつくまで、一度でも負けたら、もうおしまいだ。

俺はトーナメントの一戦一戦を、薄氷を踏むような感覚で、慎重に勝ち抜いていった。

そして、気づいた時には...

残す試合はあと一戦。

そう、俺はついに、決勝まで辿りついたんだ!

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この時点で、騎兵候補は確定だ。決勝の結果に関わらず、来年は近衛騎兵になれる。

でもどうせなら...最後まで勝って終わりたい、そう思った。

 

が、ここで...

対戦相手がとんでもない相手であることを知る。

イシュルメ・クーガン。

俺の...「お義父さん」だった。

 

「あ、あのね...」

決勝を控えた夕食の場で、アラベルが苦笑いしながら話し始めた。

「今日お父さんに会ったから、あたしつい言っちゃったのよ。『お父さん騎兵内定おめでとう!でも明日はあたし、カールを応援するからね』って。

そしたらお父さん...ふふふふ...なんて笑いだしちゃって。『いい度胸だ...婿殿には容赦しないぞ、って言っとけよ!』って言いながらまたふふふふ...って笑ってるの。

多分お父さん明日、ヒートアップしてると思う。ごめん!」

「は...はは...そっか。いや、俺もお義父さん相手でも容赦しないから!」

「う、うん、頑張って!」

 

 

そうして迎えた運命の決勝戦

残念ながら、俺はアラベルの言葉通り、気合の入りまくった「お義父さん」の勢いに負け、残念ながら優勝することはできなかった。

だけど、

-陛下の代理人として、両者ともに優れた戦士であると認め、喜んで来年の騎士隊に迎えよう-

親友でもある王配・ルチオのこの言葉を聞いた時、

やっとここまで辿りつけた感慨に胸が熱くなった。

俺は近衛騎士隊に入れたんだ...。

 

祝辞が終わり、アラベルや親友ルチオ、そして家族からの祝福の言葉を次々に受けていたところー

「お兄ちゃん、おめでとう、近衛内定、良かったね!」

山岳兵団リーグの試合を観戦し終えた妹が、ハアハア言いながら走り寄ってきた。

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「せっかくの決勝なのに、応援に行けなくて、ごめんね。今日の試合はジャスタス君のエルネア杯出場順位がかかってたから...」

「気にするなよ、ダンナ優先で当然じゃないか。で、ジャスタスはどうだった?」

「今日も勝ったのよ!3位通過でエルネア杯に出れることになったの!」

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そうだった。
俺はようやく騎兵への第一歩を踏み出したところなのに、二つ年下の義弟は、既に次の段階へと歩を進めていた。
「良かったな!ジャスタスにおめでとうって伝えておいてくれよ」

「うん、ありがとう!」

あいつと俺とでは、もうすでに見えているものが違うんだ。

その差は埋まることがあるんだろうか?

 

 ...その時、父と「お義父さん」が話しているのが聞こえてきた。

「...龍騎士の前でこんなことを言うのもお恥ずかしいんですが、騎士隊に入るのは、子供の頃からの夢だったんです。それがようやくー」

「いやいや、夢を叶える為に諦めず努力するということは、いくつになっても、素晴らしいことですよ」

 

 

そうか、お義父さんも...。

ずっと夢を諦めずに、ここまで来た人だったんだ。

俺もまだ、こんなところで立ち止まるわけにはいかない...。

 

 

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エルネア歴205年。

俺は末席ながら、憧れだったローゼル近衛騎士隊の一員となった。

ただ憧れは...すぐに容赦のない現実に変わっていった。

(つづく)

 

 

※アラベルちゃんの性格は「求道者」で、本来は「アタシ」喋りなのですが、顔と合わないし話の展開にもそぐわないので、「あたし」に変えさせていただきました(^^;

 

 

 

選ばれなかった子(1)

「カール...言い訳がましくなるが、力の継承者にお前を選ばなかったのは、お前の能力が劣っていたからじゃない。お前の成人前にはまだ私の能力が...後世に引き継ぐまでのレベルに至ってなかったからだ」

「いいよ、父さん。俺は全然気にしてないよ、龍騎士でも何でも自分の力で掴み取るまでさ!」

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...父から「龍騎士の力の継承者」にマグノリアを選んだ話を聞いた時、

強がってそう答えはしたけれど、一抹の寂しさを感じたのは事実だ。

 

そもそもなぜ「継承者」にマグノリアを選んだかというと、

「あの子が唯一、子供の頃の夢を「龍騎士」と言ってくれたから」だそうだ。

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俺の夢は「バグウェル」で、確かガイスカは「フォモス」だったか...。

ちなみに、その下のマティアスやグラハムは、父の寿命のことも考えて、候補から外したらしい。

「バグウェル」も「龍騎士」も要するに、子供の発想で「強い存在」ということを表現を変えて言ったに過ぎない。

だから「夢が龍騎士だったから」というのは、実はこじつけだったと思っている。

当時マグノリアは「オブライエン家に生まれた唯一の女の子」だった。

単純に父は、妹のことが可愛くて仕方がなかった...それが本当の理由だろう。

能力で言えば、ガイスカが兄弟の中でも、群を抜いて優秀だったから。

 

俺とマグノリアは成績もドッコイドッコイで、

取り立てて優れていたわけではなかったが、

逆に目を背けたくなるほど酷い成績でもなかった。

妹が俺より優れていたわけじゃない。

が、俺も妹に勝っていたわけじゃない。

俺も妹のことは可愛く思っていたし...マグノリアが選ばれたからといって、

妹を妬ましいと思ったとか、不満だったとか、そういう気持ちはなかった。

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ただ、俺は「選ばれなかった」

そのことがずっと...心の隅っこに..どうしても取り切れない塵のように、残っていたんだ。

 

マグノリアを後継者に」という父の目論見は、あっさりと崩れることとなった。

マグノリアが、山岳コロミナス家長子のジャスタスと恋仲になり、山岳嫁として嫁ぐ道を選んだからだ。

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ジャスタスは俺にとっても幼い頃からの友人で..

その誠実で実直な人柄を知っていたから、俺は心から二人の結婚を祝福した。

あいつなら安心して、大事な妹を任せられると思った。

だが父にとっては二人の結婚は「計画をぶち壊す暴挙」でしかなかった。

よって当然、激怒して大反対したが...

結局俺や親友のイグナシオさんの仲裁もあり、しぶしぶ折れて受け入れることとなった。

マグノリアはもはや龍騎士にはなれないが、マグノリアの力を引き継いだ孫が、

山岳兵隊長として龍騎士になれば、銃と斧、二つのスキルを持った戦士が誕生する。」

父はそう考え直して自身を納得させたらしいが、それでも...

期待をかけた愛娘のある種の裏切りには、かなり落胆したようだ。

「これでは、ガイスカを選んだ方が、良かったかな...」

あるとき父が母にこう話しているのを、偶然聞いてしまった。

-ここでも俺はお呼びじゃないっていうことか-。

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でもまあ、父さんがそう思っても仕方がないんだ。

成人後の俺は明らかに「デキの悪い」息子だったから...。

 

俺は成人後一年経ったらすぐに「近衛騎兵選抜トーナメント」にエントリーした。

騎士隊入りを選んだ理由は単純に「格好良かった」からだった。

歴代の騎士隊長が授業で語ってくれたように、近衛騎士こそが「王国の花形」であり、眩しい存在に思えた。

父が長く魔銃導師を務めていた為、

子供時代の殆どの期間を導師居室で過ごしたけれど、

なぜか魔銃師会には憧れを持てなかった。

自分自身も魔銃兵は向いていないと思っていた。

父もそれには同意見だったようで、父から魔銃師会入りを勧められたことはない。

ガイスカの方には、熱心に勧めていたようだけど...。

 

意気揚々とエントリーしたはいいものの、実力不足は明らかで、

俺はアッサリと二回戦で敗退した。

根拠のない自信だけはあったので、めげずに翌年も志願した。

だが、結果は同じだった...。

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-結局、やみくもに志願しても、それに伴うだけの実力がなければ、ただ徒に枠を消費するだけなんだ...。

根拠のない自信だけで突き進んだ自分が恥ずかしかった。

翌年はエントリーを諦めた。

 

ちょうどその頃、俺は今のカミさん...当時は恋人だったアラベルと結婚した。

本当は、二回目の挑戦で優勝できたら、即座にプロポーズするつもりだった。

...が、そんな物語のような、よく出来た展開にはなるはずもなく...

結果、グズグズとプロポーズできずにいる俺に放置されている親友を心配した妹から、キツイ一言を見舞われた。

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「お兄ちゃん、アラベルちゃんはお兄ちゃんが恰好良くて強いから、好きになってくれたんじゃないと思うよ。だから、騎士になるまでなんて...引きのばす必要、ないんだよ!」

「...そ、それハッキリ言うなよ!」

「だから、そのままでいいじゃない。お母さんだって...強いからお父さんを選んだと思う?」

「いや...むしろ母さんはよくボヤイてたよな。『わたくしは「英雄の妻」になりたかったんじゃないのに...。出会った頃のように、もっと一緒に時間を過ごしたいのに』ってさ」

「アラベルちゃんは、お兄ちゃんと一緒にいて楽しい、いつもおどけながらも気を使ってくれる優しさが好きって言ってたよ。変に恰好つけないで、そのままの自分で、いいんだよ!」

「...そっか」

...こんなデキの悪い俺でも、好きになってくれる相手がいるなら...

俺はその娘のために生きよう...

こうして俺は、騎士への夢を一旦脇に置いて、アラベルとの新しい生活に軸足を移すことにしたー。

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(つづく)

 

 

 

 

 

もう一つの準決勝(2)

「兄さん、勝利おめでとう」

「ガイスカ、次はお前の番だな。一足先に決勝で、待ってるからな!」

15日の準決勝。兄は義弟にあたる山岳兵団長にあっさり勝利した。

祝福の言葉を告げた自分に、兄は上機嫌で話を続けた。

 

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「知っての通り、俺たち近衛騎士隊ではここしばらくの間、龍騎士はおろか、勇者さえ輩出していない...。王立闘技場は俺たちのホームグラウンドであり、初代龍騎ローゼルは、近衛騎士だったにも関わらず、だ。

優秀な先輩たちをもってしても、魔銃師会の勢いを破ることはできなかった。

だが、目の上の瘤だった魔銃師会は、既に全員敗退した。

これでお前が準決勝に勝利すれば、決勝戦は俺とお前、騎士同士の対戦となる。

どちらが勝っても騎士隊の勇名を、世に轟かすことができるんだ。

俺たちに課せられた使命は重いぞ。まあ魔銃導師にすら勝てたお前のことだから..

勿論大丈夫だと思ってるけど、な!」

兄はばん!と私の肩を叩いた。

「兄さん、解ってるよ、決勝で待ってて。期待通りの戦果を上げてくるから」

「それでこそお前だよ。といっても、決勝ではいつも通り容赦しないからな!」

「お手柔らかに...とは言えないね。私も遠慮なく当たらせてもらうから」

 

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...そうだね、兄さん。

それが自分たちに課せられた使命なら、私はそれを全力をもって果たすのみだ。

ただ...悪いけれど

私が決勝で戦いたかった相手は、本当は兄さんじゃなかったんだ...。

 

13日の魔銃導師との対戦では、誰も私が勝つとは思っていなかっただろう。

それだけ武器・能力...全てにおいて相手が勝っていた。

ただ、私は何が何でも勝ちたかった。勝って決勝に進みたかった。

そのために、それまでの試合で魔銃師達の動きをつぶさに観察し、徹底的に分析した※

結果は...辛勝ではあるが、私の勝利だった。

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そこまでしたのは...決勝でしか戦えない相手がいたからだった。

あの組織には年齢制限がある。相手がこの場に立つのはこれで最後だろう。

龍騎士になれる最後のチャンスを相手が逃すはずはない。

騎士隊員としても、オブライエン家の人間としても、自分の立場を裏切ることではあるけれど..

実はあの時私は、兄の勝利を願ってはいなかった。

...が、自分の予想と密かな願望はあっさりと覆された。

私の、立場を除外した、極めて個人的なエルネア杯への動機は、ここで終わることになった。

 

気乗りのしない準決勝の相手は山岳兵団のカティーナ・ペトレンコ。

ナトル時代は同級生だった。

といっても話をしたことは殆どない。いつも生真面目にノートを取ってる姿だけはなんとなく覚えている。

彼女の印象はその程度で、お互いが武を競う立場となった今も、そこから大して変わったわけではない。

娘ロシェルが、図らずも彼女の息子と婚約することになったが...

正直言うと気乗りのしない縁組だ。

だが子供の頃から育まれた愛情を、否定するわけにもいかなかった。私と妻もそのようにして結ばれたからだ。

幼い頃からの慕情というものは...消し去ろうとして簡単にできるものではない。

それは私自身がよくわかっている。

「..アンテルム君がすでに武術職で嬉しいよ。上級ダンジョンでも一緒に探索ができるからね。今度ぜひ一緒に、ゲーナの森へ行こう。それとも帰らずの洞窟の方がいいかな」

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「...は、ハイッ...」

婚約パーティの際、私がこう話しかけると、彼は明らかに狼狽していた。その様子から、彼が8歳にもなるのに碌に探索に行っていない事実が見てとれた。

それでも、こんな頼りない男でも、いずれ兵隊長の地位につき、更にはエルネア杯の出場権も得るのだろう。なんといっても6人中4人が出場できる緩い条件だ...。しかも6人に入るには試験などなく、年配になると強者は順番に引退していってくれる。一方で娘ロシェルは、これからどんなに鍛錬しようと試合に出ることも叶わない。

姉さんも、ロシェルも-。

どうして大事な者たちは、望んでこんな古臭くて、馬鹿げた因習に縛られた組織の一員になってしまうのか...

 

個人的な意欲は落ちたしても、ここで山岳兵団に花を持たせるわけにもいかなかった。

兄が語る通り、「騎士隊の強さを王国に示す」ことも、騎士隊副隊長としての私の任務だから。

既に義兄は兵団長の地位を降りたと聞く。

兵団代表の任を譲られた彼女は、必死にこちらに向かってくるだろう。

どんな相手でも、ガムシャラに向かってこられるほど厄介なことはない。

悪いがこちらも、全力で君を倒させてもらうよー。

私が戦いたかった山岳兵は、君ではなかったんだけど、ね...

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17日 エルネア杯準決勝(第二プール)

山岳兵団 兵団長代理 カティーナ・ペトレンコVS

近衛騎士隊 副隊長 ガイスカ・オブライエン

 

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勝者:ガイスカ・オブライエン

 

「ガイスカ!やったな!これで決勝は、俺とお前の一騎打ちだ。

騎士隊長の座同様、龍騎士の座も渡すつもりはないからな。覚悟しておけよ」

「ありがとう。兄さんも覚悟しておいて」

「...何かお前、勝った割には、あんまり嬉しそうじゃないな...戦ってる時も、なんだか苛ついてるようだったけど...気のせいか?」

「いや...そんなことはないよ。初めてのエルネア杯だから...柄にもなく緊張しているだけさ...」

(準決勝編・おわり)

※エルネア杯編はもうちょっと続きます(^^;

※最初の文章ではエゴンさんの動きだったんですけど、考えたらエゴンさん魔銃導師だったからシード取ってたので、VSガイスカがエルネア杯初戦なのでした。この「魔銃師対策」のノウハウはガイスカから他の騎士隊員にも後に伝授され、騎士VS魔銃で騎士が勝つ確率が上がります←うちの国ではまじに騎士強い(^^;

 

もう一つの準決勝(1)

兵団長から連絡があったのは、16日の午後のことだった。

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「...カティーナ、俺は本日朝をもって兵長の地位を正式に息子に譲った。

それに伴い、兵団長と評議会議員の地位も自動的に解任となる。

つまり、今のドルム山岳兵団の代表は、カティーナ、君だ。

兵団長としての全権を君に委譲する。

山岳兵団の長として試合に臨み、バグウェルへの挑戦権を勝ち取ってくれ!」

「兵団長...。」

「俺はもう兵団長じゃない。今は君がその立場だ」

 

昨日彼が騎士隊長にあんなにあっさり負けてしまうなんて、夢にも思っていなかった。

6年に渡り兵団長を務めてきた彼に対して、兵団員が寄せる信頼は並々ならぬものがあった。

いくら武器の相性で不利だったとはいえ、これまでの実績や戦士としての能力では明らかに、彼の方が上回っていた。

...そんな彼でも負けてしまうのだ。それが実戦の恐ろしさだった。

彼より遥かに未熟な私に、彼の代わりが務まるのだろうか。

しかし、兵団を率いる立場となった今、そのような弱音は許されなかった。

ここで言うべき言葉は一つだ。

「...承知しました、前兵団長。

必ずや近衛騎士めらを破り、バグウェルへの挑戦権を手に入れてみせます!」

私は、拳をしっかりと胸にあて答えた。これは遥か昔から、我が兵団で「誓い」を示す動作だ。

「...頼むぞ。君は武器相性で有利だったとはいえ、導師以上の実力者アンジェリカを既に倒している。騎士相手に厳しい戦いになるが、君ならできると信じているよ。

君が山岳兵団初の勇者...引いては龍騎士になることを祈っている。」

「ありがとうございます。」

 

...対戦相手は近衛騎士隊の副隊長、ガイスカ・オブライエン。

13日の戦いで大方の予想を覆し、明らかに格上の魔銃導師エゴン・ブエノを破っている強者だ。

かつてナトルで同級生だった。

彼と殆ど話したことはなかったが、飛びぬけて優秀な生徒だったので、よく覚えている。卒業式でも総代を務めていた。

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...近衛騎士隊に志願したのは予想外に遅かったようだが、その分厳しい選抜トーナメントをあっさりと一発で勝ち抜き、今は並居るベテラン騎士を抑えて副隊長という立場にまで出世している。学生時代の彼を知っていれば、全く不思議ではなかった。

縁あって彼の娘・ロシェルと息子のアンテルムは恋人同士となり、つい最近婚約の儀を済ませたところだ。

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親戚となる相手と戦うことになるが...お互い組織を背負う立場であれば、遠慮は無用。
先日、もうすぐペトレンコ家の嫁となるロシェルに

「私はあなたのお父さんと戦うことになるけれど、手加減はしないわ」

...こう伝えたが

「構いません。私はペトレンコ家に嫁ぐ身なので、お義母さんのご武運をお祈りします」と毅然として答えてくれた。

...いささか頼りない息子だが、しっかりした相手を見つけてくれて良かったと思う。

 

手ごわい相手であることは百も承知だが...

私は、山岳兵団の為にも、ペトレンコ家の為にも、負けるわけにはいかない!

 (つづく)

 

兵長継承。

「イグナシオ」

あの悪夢のような敗戦から一夜明けた朝食後、父が声をかけてきた。

...その用件が何であるかは薄々解っていた。

「そろそろお前に、兵長の役目を任せても良い頃合いだと思っているんだ。

お前さえ良ければ、今から継承の儀式を始めたい」

 

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「...父さん、俺、今制服着ていないよ?」

...最近は市場の福引きで当たった、着心地の良いゆったりした白いシャツを愛用していた。

その服を着ている間だけは、継承者でも山岳の後継ぎ息子でも何者でもない、只のイグナシオでいられるような気がしたからだ。

...どうせすぐに、立場上制服しか着れない時代がやってくる。

そしてそれが今だった。

 

「別に儀式時の服装の規定はない。大事なのは...お前に引き受ける覚悟があるかどうか。それだけだ。」

形式を大事にする父にしては珍しいことだ。

それだけ...思いのほうが勝っているということなのだろう。父の顔は普段にも増して真剣だった。

「分かった。任せてよ。」

答えは決まっていた。

覚悟自体はとっくにあった。

ただ...急いではいなかっただけだ。

父が龍騎士になることを疑っていなかったし、兵長を引き継ぐのはその後でいいと思っていた。

父のことは尊敬していたから、父が望むだけ続けてくれて構わなかった。

逆にもし父が、戦士として情けない男だったら、とっくの昔に自分から兵長の地位を奪い取っていただろう。「仕事」はさっさと終わらせた方が楽だから。

...自分が本来望んだタイミングではなかったが、こうなってしまった以上、自分にとっても山岳兵団にとっても、今が最良であることも確かだ。

 

父はようやく安堵した顔になった。

「...それを聞いて安心したよ。俺個人はカールに敗れたが※、山岳兵団全体としてはまだ敗れてはいない。明日にはカティーナの準決勝が控えている。ここで俺が退いて、兵団長としての全権をカティーナに譲れば、カティーナは兵団代表として試合に臨める。彼女の士気も上がるだろう。」

「...着替えてこようか?」

「いや、そのままでいい。...お前が上でゴソゴソ着替えているのを家族全員で待っているというのも、間抜けな話だろう?」

「確かにそうだね」

「それじゃあ、さっそく始めよう」

 

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父が皆の前に立ち、引き継ぎの儀式の始まりを宣言した。

 

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兵長の座を引き継ぐ者としての覚悟を次々と投げかけられる。

 

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...この儀式に臨んだ以上、その問いに否と答えるはずはなかった。

 

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この瞬間、俺はコロミナス家三代目の兵隊長となった。

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父は10年の長きに渡って背負ってきた「責務」から解放され、

その責務はこれからは、俺が背負うこととなった。

「誓いの言葉を胸に刻み、始祖と先祖に恥じぬように努めます」

...儀式は終わった...

「イグナシオ...」

最後の大任を終えた父は、心なしかかなり疲れて老け込んだように見えた。

だがその疲れはきっとこの後、母が癒すことだろう。

「お前は今後全てにおいて、俺のやり方を踏襲する必要はない。お前の考えで、お前の意志で決めていいんだぞ。」

「父さん。俺は父さんみたいに高潔でも立派でも..ないよ。そんな俺のやり方で、いいのかい?」

「俺はお前の能力も考えも信頼した上で発言している。お前の行動がコロミナス家の...ひいては山岳兵団のためになると信じているよ。役割を任せるというのは、そういうことだ。」

「分かった。ありがとう」

山岳兵団のためになる...か。何をもって「ためになる」とするのか。

俺の考えは父の...そして他の兵団員たちの解釈と果たして一致するのか。

でも、こうなった以上は、俺が考えることをやるしかないんだ。

父さんごめん...少し気苦労をかけてしまうかもしれないよ。

 

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「イグナシオ、お前もついに兵隊長になったんだって?」

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翌朝、山岳プラマー家の幼馴染、サンチャゴが声をかけてきた。

同い年の彼は昨年末、前兵隊長の母ジャンナの引退により、一足早く兵隊長になっていた。

「...ああ」

「よっしゃ!来年から遂に俺たちも試合デビューだな!

まあ何だ...最初は...先輩隊長達の洗礼にあって、ボコボコにやられちまうらしいが...。

ま、そのうちすぐに追い抜いてやるさ!俺たちで山岳兵団を盛り上げようぜ」

サンチャゴは楽天的な奴だ。超がつくぐらい前向きで、タフだ。子供の頃からそうだった。

「そうだね」

「楽しみだな!まだエルネア杯も終わってないうちになんだが...。ちょっとカティーナさんじゃ、悪いがまだ龍騎士は厳しい気がするんだ。本来はオフクロの次のNO.3の実力者だったからな。となれば、4年後は俺たちが頑張らないと。山岳兵団初の龍騎士、俺とお前のどっちが...なるかな?」

「...勿論そこは、俺が取らせてもらうよ」

「言ったな!イグナシオ、お前昔はおとなしい奴だったのに、ホント言うようになったよな。今のうちだけ言わせといてやるよ。来年見てろよ!

...でもまあ、今後のこと考えるとゾクゾクするよ。龍騎士は武術職ならだれでも憧れる目標であり...夢だからな。夢に向かって頑張れる立場で、お互い良かったな」

 

夢か...お前にとってはそうなんだな。

サンチャゴ...。俺にとって龍騎士になることは「夢」なんかじゃない。

かならず終わらせなければいけない「仕事」なんだ。

...単純に「夢」と語れる盟友を、俺は心底羨ましいと思った...。

 

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(つづく)

 

※ジャスタスを準決勝で破った騎士隊長カールは二代目PCマグノリアの兄。ジャスタスにとっては義兄にあたりますが、子供の頃からの友人のため、呼び捨てにしています。

(実際のプレイで幼少時代のカールが山岳の家に遊びにいっているのを確認済み。

逆にそこから「マグノリアとジャスタスをカップルにする」案が固まりました。)

「英雄の妻」

夫がどこにいるのかは解っていた。

こんな時...私たち山岳兵が、気持ちを落ち着けられる場所は、唯一つしかない。

偉大なる我らが始祖、ドルム・ニヴ※が見守るあの場所だ。

 

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「ジャスタス君」

私は、佇む夫に声をかけた。

「...マグノリア...」

夫はゆっくりと振り向いた。

「もう夜だから迎えに来たの。少し一緒にいても、いいかな?」

「ああ...いいよ」

夫は力なく微笑みながら頷いた。

 

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私は夫に肩を預け、お互い何も言わずに一時を過ごした。

ふいに夫が口を開く。

マグノリア...すまない...」

「...ジャスタス君?」

「俺は結局...君が俺に預けてくれた、夢を叶えることができなかった。

君の父さんにまで誓ったのに...何も成し遂げることができなかったんだ...

俺は...龍騎士には...英雄には...なれなかった」

彼は絞るような声でそう言って、項垂れたまま拳を握りしめていた。

「これでは...何のために...君は...」

「...いいえ。」

私は彼の頬に触れ、顔を寄せて口づけした後、夫の顔をじっと見つめて、言った。

「私がなりたかったのは...英雄の妻ではないわ。

私は...ただ、あなたが好きで、ずっと側にいたかった。

それがどんなことよりも、私にとって大事なことだったの。

そのために自分が下した決断を、後悔したことなんかない。

家族のために、兵団のために...

いつも誰よりも、自分を厳しく律して働いてきたあなたのことを、

私は誇りに思ってる。

そんなあなたの側にいれたこともね。

だから、自分を責めないで。

「私たちの」今までを、否定することなんて、ないのよ!」

夫はハッとした顔で私を見つめ返し、

その後、力強く私を抱きよせた。

「ありがとう...マグノリア

俺のほうこそ、君がいてくれて...どれだけ...」

 

...そのまま私たちは固く抱き合った...。

 

そして暫くの時間が過ぎた後-

 

「...そろそろ帰ろう」

夫の声は、いつもの「謹厳な山岳兵団長」に戻っていた。

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「俺にはまだ、やらねばならない最後の仕事が 残ってるんだ...」

(続く)

 

※「外から来た山岳嫁」であるマグノリアは、血統的には勿論「ドルム・ニヴの子孫」ではないのですが、マグノリアの意識は完全に「山岳兵の一員」になっているので、あえて「我らが始祖」という言葉を使っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご武運を。

 

父がガノスに旅立ってから、初めてのエルネア杯。

そしてこれが...おそらく夫にとっての最後のエルネア杯となる。

私は...ジャスタス君に勝って欲しかった。

何としても。

 

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各試合は目まぐるしい早さで進んでいく。

この場所に至るまでの

それぞれの戦士達の想いも努力も、

敗者となった瞬間に水泡のごとく消えていく。

 

そんな過酷な世界に、私の親友・兄弟...そして夫は身を置いている。

その世界に身を置けることを...羨ましくないと言ったら嘘になる。

でも、私にそれを言う資格はないのは解っている。

自分の意志で、その権利を放棄したのだから。

 

マグノリアは自分の夢を捨ててまで、俺の所に来てくれると言ってくれたんです。

...だから必ず...俺は彼女の代わりに...いや、彼女と共に龍騎士になります!」

あの夜、激怒した父を目の前にして、彼は毅然とそう言ってくれた。

あの日以降、彼が自身を鍛え上げるために、どれほどの犠牲を払ったことか...。

 

ここに至るまでの二度の挑戦は...残念ながら敗北の形で終わってしまった。

山岳兵が公式試合に出られるのは、子供に家督を譲るまでの間のみ。

夫はもう18歳...おそらくこれが「最後の挑戦」になるだろう。

 

そんな私の感傷をよそに、試合は着々と進んでいく。

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私の親友アンジェリカは、準決勝を目前にして、

山岳兵団序列第二位の戦士、カティーナに敗れた。
前回のエルネア杯では、颯爽と山岳兵に勝利した彼女なのに...。

どんな強い戦士でも、相手がある限り、結果に「絶対」なんてないんだ。

 

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そう。「絶対」はないのはここでも証明された。

圧倒的な下馬評を覆し、弟ガイスカは「魔銃導師」エゴン・ブエノに辛くも勝利した。

大事な弟の勝利を喜ぶとともに...近づく「その時」を前に...心が揺れる。

 

15日。

エルネア杯準決勝(第一プール)

山岳兵団長 ジャスタス・コロミナス VS 近衛騎士隊長 カール・オブライエン

夫と兄が...対戦する。

 

カール兄さん。

私は兄さんが、ここに来るまでどれだけ苦労してきたかを知っている。

旅人の血を半分受け継ぐ私たちは、決して素質に恵まれているわけではない。

生粋のエルネア人と渡り合う為には、倍以上の時間を鍛錬に費やす必要がある。

 

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兄は選抜トーナメントに挑戦しては敗れることを繰り返し...

ようやく三度目の挑戦にして、騎士隊への切符を手に入れた。

騎士隊入隊後も決して順風満帆ではなかった...

だからこそ、兄が騎士隊長にまで登りつめた時は、自分のことのように嬉しかった。

 

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いつも、私たちのことも気にかけてくれた優しい兄さん。

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兄さんが、父の名を継ぐ者として、どれだけの想いをこの場にかけているかも、私は知っている。

 

そして、私のもう一人の親友アラベルが、そんな兄さんをしっかり支えてきたことも...

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でも。

全ての願いは同時には叶わない。

私はの願いは、夫ジャスタスが龍騎士になること!

そのためには...

 

私は、山岳兵団長の妻、マグノリアとして、

夫にヴェスタの宝剣を手渡した。

「このお守りで勝利を掴んで!

どうかご武運を、兵団長!」

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「...ありがとう。勝ってくるよ。山岳兵団の誇りにかけて」

「あなたを信じてるわ...」

そう、信じていたの。あなたの勝利を。

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だけど...

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...勝負は一瞬で決着が着いた。

兄の猛攻は、夫の反撃を一撃たりとも許さなかった。

「父さん!」

思わずイグナシオが声をあげた。

 

試合後、夫にかけよろうとする息子を、私は手で制した。

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「声をかけないであげて」

兄と握手した後、静かに闘技場を後にする夫の背中を

今は見送るしかなかった...

 

(つづく)

 

 ※この時期はもう3代目に引き継いでいるため、実際にゲーム上でヴェスタを渡したのは息子である三代目PCイグナシオなのですが、中の人の気持ち的には、妻マグノリアとして渡しています。